ハッピーエンド

そうして僕は珍しく、夜の散歩に出かけたのだ。



僕の家の前は坂になっている。



そんなに急ではないが、気をつけて歩かなければどんな坂道でも体制を崩してしまうのは簡単に予想が付く。



だから僕はいつもよりゆっくりと歩いていた。



もしかするとその日の天気のせいもあったかもしれない。



その日は晴れ。



雲一つ無くて、深い藍色の空が僕を覆っている。



暗闇が黒くないのは、月が綺麗に輝いているせい。



僕はそんな景色を見上げながらゆっくりと歩いていた。



月は、手が届きそうなのに届かない。



不思議な天体だ。



誰もいない静かな夜のこと。



僕は一人で歩いている。