ハッピーエンド

話したことも無い彼女は、僕の中でヒーローになっていた。



僕が高校に入る前に思い描いていた、高校生の理想像。



中学生よりもちょっと大人で、自由があって、よく遊ぶし良く学ぶ。



流石に僕も何ヶ月か高校の環境で生活してきて、僕が思い描いていたような憧れが高校には無いことくらいは十分理解していた。



ただ彼女だけは、僕の理想を壊さずに高校生をやっている。



今考えると彼女と話していない分、僕の理想や想像が十二分に働いていたせいでもあるのだが。







そんな僕の理想は、ある夜の日にあっさりと壊される。



その日、僕は学校で消しゴムを無くした。



家に帰れば何個か予備があるだろうと思っていたのだが、僕の始末が悪かったせいで母親に捨てられていた。