ハッピーエンド

前は黒髪を肩ほどまでに伸ばしていたが、夏を前にばっさり切ったのだ。



こっちの方が、希有子のイメージに合う。



「好きなら好きって言えばいいのに」



呟きのような言葉は、店内の騒音にすぐに消される。



けれど僕にははっきりと、希有子の声が聞こえた。



聞き間違いじゃない。



………こいつはなんで、こんなことが言えるんだろう?



「諦めずにアタックですよ先輩」



やっぱり声は小さいけれど、希有子は言って、微笑んで見せた。



ふんわりとした笑い方。



らしくない。



らしくないよ希有子。



それに君は、すごく馬鹿なんじゃないか?