キミ色

でも、俺がいくら呑み込んだところで、何も状況は変わらない。
空羽の口からは、容赦なく俺の話題が出てきていた。


「それからさ…」
「もう!」


空羽が楽しそうに喋っていた言葉に、俺は自分の言葉を重ねた。
これ以上、言葉を聴きたくなくて。
もう、空羽の口から何も聴きたくなかった。



「…もう、いいよ。」


その言葉だけ零して立ち上がると、俺はリビングを出た。
この場所にいたら、何故だか泣いてしまいそうで…


「…あ、え?櫂?!」



後ろから、戸惑った空羽の声が聞こえてくる。
そして、空羽は俺を追いかけてリビングを出てきた。



「櫂!?え…?あの、ごめん。なんか、空羽悪いこと言っちゃった…?」



俺はどうしても振り向くことが出来なかった。
だって、キミはどうせまたあの心配そうな表情を浮かべているだろうから…
またキミはあの不安そうな表情を浮かべてるんだろう?



俺はそんな空羽の顔を見たくなかった。



ごめん…空羽。



俺はそう心の中で言うと、部屋を出た。
扉を一歩抜けると、上には綺麗な夜空が広がっている。
不気味なぐらい綺麗に月が光っていた。