キミ色

俺の中で空羽はとても大きなモノになっていた…
でも、その事に俺が気付くのはまだまだ先のこと─……




丁度良い温度のせいで気持ちよくなったのか、ふと時雨を見ると爆睡していた。
屋上で寝てた時と同じように、暢気な顔をして夢の世界に入っている。



それでも、時雨は格好いい。
暢気なのに、爆睡してるのに、何故か時雨は格好いいんだ…


「…ったく、もう…」



そう呟いたものの、その表情が羨ましくて少しだけ嫉妬してしまう。
呆れているはずなのに、どこか時雨が眩しく見えて仕方ない…



俺は小机の上に置いてある、時雨に渡したコップを回収し流しに置いた。
時雨の近くに置いときたくない、そう想う気持ちが心のどこかにあった。


お皿を洗う為、蛇口を捻ると素直に流れ出す水。
まるで、時雨の心みたいに水は真っ直ぐ出続ける。



“俺も櫂も同じ人を好きになった、ただそれだけ─…”



そう言った時雨の言葉が、ずっと頭から放れないでいた。
『ただそれだけ─…』
本当にそんな言葉で言い流せる程、軽いものなのだろうか?


俺はそうは想えない…
どうしても、時雨の言うようには納得できない自分がいる。



それはきっと、色んなモノを失って、色んなモノを傷つけて、色んなモノを怖がって、、
そんな恐ろしい道を選ぶことなんだと俺は想うから…




何かを得れば得るほど、何かを失いそうで怖いんだ─……。