キミ色

「っちょっと!!あんた何飲んでんのよ!?」


蓮が慌てて聡クンを止めようとしたが、聡クンはすでに遠くの方まで走って行ってしまっていた。


「別にいいじゃん。」


「駄目だよ!!お金、、返すよ…」


蓮の顔色を窺えば分かる。
明らかに持ち合わせていないのがオチだろう。


「いいよ、そんなの。別に飲みたい訳でもなかったし、それに金欠なんだろ?」


「─……」


黙り込んでしまった蓮に紙コップを差し出し、俺はベンチに腰を下ろした。
勿論、俺の紙コップの中にはレモンティーが入っている。


「あたしはいいよ!!」


そんな事を言ってなかなか紙コップを受け取らない蓮の前で、俺はジュースをわざと流し始めた。



「は!?何してんの?櫂!?」


「だって俺もいらねぇし」


「だからって勿体ないでしょ!?」


「そう?」


蓮に何を言われても流し続ける。
中に入っていたオレンジジュースが土と混ざり合っていく。


「っ分かった!!!…分かったよ……貰います。」


ようやくそう言った蓮の言葉で、俺は紙コップを上にした。
半分ほど流れてしまったが、残っているジュースを蓮の目の前に差し出す。