キミ色

そんな蓮に、俺は優しい言葉をかけた。


「申し訳ないなんて言わないで?」


嘘でもこう言ったらまた蓮は顔をあげてくれるだろう?
蓮の沈んでる表情なんて見たくないんだ。
だから、笑ってよ、蓮。


俺は空を見上げながら、蓮の様子を伺う。
俺の望んでいた初めての彼女を眺めながら、俺はそっと背中を寄せた。



抱きしめる事は…出来ない。
だって、君はもう人のモノ。


抱きしめる事は、もう俺の役目ではない。


「顔上げてよ?蓮。俺、蓮には感謝してるんだよ?」


そう言うと、蓮はようやく顔をあげてくれた。
本当に蓮は素直だったよね。


何故か泣き出しそうになってる蓮に、俺はまた笑顔を見せた。
さっきのは偽りの言葉だけど、今度の言葉は本当の気持ちだから…。



蓮には感謝してるんだ。
時雨の次ぐらいに。


無知の俺に蓮はいろんな事を教えてくれたから。
頼りない彼氏なのに、付き合ってくれた事も。



本当に全部に感謝してる。



蓮は首を横に振り、手で涙を拭った。
そして俺に疑問を投げかけたんだ。


「もし、あたしも櫂が初めてのヒトだったら、あたし達もっと上手くいってたかな…?」