キミ色

咄嗟に目をつぶった俺の横を時雨は何事もなかったかのように走り抜けて行った。




…ばれてない?




一瞬安堵しかけたが、俺の声が前から聞こえてきた。



「…櫂?」




一気にまた緊張し出す体。
少し固まりながらも近づいてくる空羽に歩みよった。




しーんと静まりかえる空間。
川のせせらぎだけが俺たちの耳に届く。




何か言わなきゃ…




焦りだす自分とは裏腹に結局先に声を発したのは空羽だった。




「…どうしたの?」








「……千鶴さんが、心配してる…。」



出てきた言葉はこんなちっぽけな言葉だった。




「ママが?」




「うん」
「…櫂?」





合わさった声に振り返ると、そこにはすいかを両手に持った時雨がいた。






「お前、何でこんなとこいんの…?」