キミ色

レモンティーを持ったまま2階に上っていると、リビングの扉が開く音がした。



反射的に振り向くと、そこには空羽がいた。




「櫂…」



小さな声でそう呟く空羽。
いつもの無邪気さが明らかに消えていた。




「何?」



「…お願いがあるんだけど。」



「お願い…?」





「花音ちゃんの部屋を見せて欲しいの。」





は…?
何言ってんだよ。



「お前、本気で言ってんの?」




「……本気よ。」




「嫌だ。」



あの部屋だけは……。
あそこと俺の部屋は昔から何ら変わらない3人だけの居場所なんだ。




これ以上…
俺たちの居場所を乱さないで。




「どうしても…だめ?」



何回聴かれても俺の答えは変わらない。
だって、あそこだけは花音で溢れてる。




あの部屋だけは…
全てが花音色に染まってる。