キミ色

車が道路を通り抜ける。
1台の車が俺たちの沈黙を装飾した。



「櫂は…、優しいけど優しすぎるよ……―」



空羽はしっかりと俺を見つめてそう言った。
先に目を逸らしたのは俺だった。



空羽は強い…
改めてそう想った。



こんな風に泣き顔でも堂々と主張を言う…
それも、本人を目の前にして…



俺なら絶対にできない…



「1人で…頑張りすぎだよ…」



その言葉を最後に空羽は俺の前から去って行こうとした。



“頑張りすぎだよ…”



頭の中で言葉が響く…。




花音…?
ねぇ、花音なの…?



嫌だよ、どこにも行かないで。
置いてかないで。




いつもみたいに慰めてよ。
ねぇ、励ましてよ。




俺、壊れちゃうよ…




俺はぱっと空羽の腕を握ると、強引に反転させ思いっきり力を込めてぎゅっと抱きしめた。




お願い…
もう…どこにもいかないで……―