手紙を読んだ瞬間、俺は玄関の扉を開けた。



「…櫂っ!」



帰らなきゃ…
俺は、家に行かなきゃいけない…



ごめんね…空羽。
1人にして…



今、行くから……─



「…放して。」



俺は声のトーンを低くして、蓮に背中を向けながらそう言った。



「……っ櫂…」



感謝してる、蓮。
蓮のことが好きだったのは嘘じゃないよ。



…でも、蓮を本当に幸せにするのは、俺じゃない。
蓮なら…、解ってくれるだろう…?




「…放して。」



冷静にそう言った俺の言葉に、蓮は力が抜けたように手を放した。
蓮の溢れ続ける泪が、床に落ちていく。



蓮の嗚咽する声が虚しく響く玄関で俺は最後に言葉を零した。




「蓮…、ありがとう。」




全ての意味を込めて、この言葉を言いたかったんだ。
本当に…、本当にありがとう…




そして、俺は嵐の夜へと駆け出した…。