キミ色

美波さんのいる部屋から出て、俺はとりあえずロッカールームに向かった。
中に入り自分のロッカーを開けると、荷物と引き換えにエプロンを取る。


ロッカールームにある時計をふと見上げると、もう5時30分。
結局俺がバイトし始めたのは5時30分からということになる…



「…はぁ。」



電気も点いていない暗いロッカールームで、俺は一人またタメ息を吐いていた。



それから昨日と同じように仕事を続け、俺はまた接客、片付けを繰り返していた。



今日も「MiLky」は盛況だ。
たまに店内でテーブルが空くのを待ってる人もいるぐらいに。


店をもっと大きくしたらいいのに…、去年もそう思っていたのを思い出す。



きっと、マスターがしんどくなるからだろうなぁ…
なんて時雨と喋ってたことも。



あー…
駄目だ。



また、懐かしんでる。
勝手に思い出してる…。



俺は、今考えていたことを頭から一瞬で消した。
小さい火に水をかけるように…。



本当にここは、俺たちの思い出がつまりすぎてる…




一番忙しい7時から9時までが終わり、俺達にも少し時間に余裕がでてきた。



「槻丘クン、これラスト!」



笑顔で渡してくる泉さんからコップとお皿を受け取り、俺はスポンジに洗剤を染み込ませた。



次第にふわふわと泡立つ真っ白な泡。
ふんわりと浮いては消えるその泡は、まるで俺の心のようだ―……。