キミ色

俺はさ…、


俺は─…



「槻丘クン…。」


急に声をかけられた俺は顔だけを若菜チャンの方に向けた。
その瞳は真っ直ぐ俺を捉えている。



「…ねぇ、…何で?」



いつもの甘い声でそういう若菜チャン。
フェンスから手を放すと、俺を覗き込むように見下ろし始めた。


…何で?
何が、何で…?


意図が全く理解出来ない俺。
でも、若菜チャンの表情が変わったことだけは敏感に察知していた。





「…何で、若菜にそんな優しくしてくれるの─…?」




まるで風が運んできた言葉のように、その瞬間爽やかな風が吹いた。
木々がざわざわと揺れる。
そして、太陽も若菜チャンに陽を差した。




「…えっ─…」



まさか、そんな言葉が若菜チャンの口から出てくるなんて─…。
どう口にしていいのか、全く解らない…



でも、若菜チャンの瞳はしっかりと俺の目を見据えていた…