キミ色

静かな教室の空気が、どんどん冷たくなっていく。
窓から見えていた小雨も、序々に強くなってきた。



若菜チャンが俺を見る目は、虚ろで、切なさに溢れていた。
そんな若菜チャンが痛々しくてたまらない…


若菜チャンをしっかりと凝視など出来ずに、俺は外ばかりを見ていた。
そして、若菜チャンの心の叫びと真っ直ぐ向き合っていた。




“幸せって何?”



そう聴いた若菜チャンが、どれだけ辛い恋をしているのかは、俺には解らない。
でも、その気持ちだけは俺にも解る気がするんだ…



俺も同じような経験があるから……─



きっと、その恋は欲しくて欲しくてたまらないけど、手に入らないんだろう。
掴んでも掴んでも、空気のように抜けていってしまうような恋…



自分に気持ちが向いてないことぐらい解ってる。
でも、どうして心って上手く操作できないんだろう…


諦めてほしいのに、心が想うように働かなくなる。
距離をとろうとすればするほど、忘れられなくなる。



そして、いつか考えてしまった…



相手が一歩前に進んだ時に、
もう、誰かのモノになってしまう時に、



この気持ちは、迷惑なんだ……─って



でも、どうしようもなかった…
俺は感情を持った人間だから…


ヒトは忘れたいモノ程忘れられない。
残酷なほど消えて欲しい想いや考えは、絶対に忘れてくれない。


覚えとかなければいけないモノは簡単に忘れていくのに…
ヒトの感情は、嘘をつけないから─………