キミ色

「あーあ。蓮は本当に幸せ者だね。そんなこと言ってくれる人普通いないよ?」


切なそうな声でそう言うと、若菜チャンは椅子から立ち上がった。
そして教壇の前まで行くと、チョークを持って何やら文字を書き出した。



「…じゃあ、ここで槻丘クンに問題です!」



…問題?



その声を元とし、若菜チャンの手はスラスラと動き始めた。
しなやかに動くチョークは、まるで若菜チャンの心のよう。



そして数秒後、黒板には白い文字が映し出された。
紛れもなく若菜チャンが書いた、丸くて可愛い文字…



でも、その言葉は行き場を失っていた…



どうして、そんなに溜め込んでしまったの?
全部、1人で抱え込んでしまったの…?


辛くなったら、周りを頼って良いのに。
しんどくなったら、蓮みたいに誰かに寄りかかっていいのに。



だって、友達や家族はそのタメにいるんじゃないの…?



…でも、出来なかったのかもしれない。
若菜チャンは一見誰よりも強そうで、本当は人一倍繊細な心の持ち主だから…



人一倍敏感な心が邪魔をして、誰にも言い出せなかったのかもしれない…



ねぇ、そんなに辛そうな苦しそうな表情見せないでよ…
今の若菜チャンは笑ってるけど、苦しそうにしか見えない…



そんな表情をするぐらいなら…、思いっきり泣いてよ?
我慢するぐらいなら、泣いて欲しいよ…。