キミ色

若菜チャンは、俺に無理矢理笑顔を作り教室に入って来た。
そして、俺が座っている席の前の席に腰を下ろす。



「…蓮を、救ってくれたんだね。」


甘くゆっくりとした独特の声でそう言った若菜チャンは、決して俺を見ない。
そんな若菜チャンを、俺は凝視していた。


もう、あのドアに立っていた時から想っていた。
何かいつもと違う…?


いつもの若菜ちゃんらしくない……


そんなことを想いながらも、俺は正直にその質問に答えた。
その方が、若菜チャンも本当の気持ちを言ってくれるような気がしたから。



「…そうかな、、?俺、救えてる?」


俺の口から弱弱しい声が教室に響いた。
不安で仕方のないような俺の声。



「当たり前じゃん。蓮、あんな風に笑い出したの最近なんだよ。」


少し笑いながら若菜チャンは俺に教えてくれた。
少しだけ自惚れてもいいかな…?


「ありがと。」



「ううん、感謝するのはこっちの方だよ。蓮を生き返らせてくれたんだから…」



その若菜チャンの声を聴いて、どれだけ深刻だったのかが良く伝わってきた。
きっと、若菜チャンも凄く心配したんだろう。



「俺だけの力じゃないよ、きっと若菜チャンのおかげ。蓮が1番辛い時に傍にいてくれたんだろう…?
俺は蓮が1番辛かった時、傍にはいてやれなかったから。」



蓮を闇から救ったのは、若菜チャンだよ。
俺はただ、闇から抜け出した蓮の手を握っただけ…。