キミ色

そういうのは、我が儘なのかな?
でも、それなら勝手かもしれないけど、俺の我が儘を受け止めて欲しい。



誰にだって見られたくない部分があると想うから…
だから俺も、蓮の全てを知ろうとは想わない。


人間なのだから、知られたくない部分があって当然だ。
裏と表…、そう言うと悪く聴こえるかもしれないけど、俺はあっていいと想う。


裏表のない人間なんていないのだから。
ずっと表を出し続けるなんて、そこまで人間は器用じゃない。


だから、“あの人は裏表が激しい”なんて悪口が出来てしまったのだろう?


みんな自分を守りたいのだから。
だから、必死で裏を隠そうと表を出すんだ。


俺だって蓮に嫌われたくないから、表を出すんだよ。
蓮は俺の彼女だから…、余計に裏なんて見せたくないんだ。


ねぇ、蓮…俺、間違ったこと言ってるかな…?


蓮の背中に心の中でそう言葉を零すと、丁度チャイムが鳴り響いた。
みんな一斉に椅子から立ち上がり、号令に合わせて礼をする。


そんな空気に身だけを任し、俺は直ぐに座った。



もやもやした感情が俺を支配する。
そんな気持ちを現すかのように、俺は鞄の中に筆箱やプリントを投げ込んだ。



「…櫂」


そこに可愛らしい声が響いた。
その声の持ち主は…、空羽だ。


「…何?」


出来るだけ、蓮の前では空羽と話したくない。
また、蓮を傷つけることなんて絶対にしたくない…。


少し声を低くしてそう言うと、空羽は一枚の紙を手にした。