キミ色

午後の授業からは、ずっとうわの空だった。
午前中の勢いが嘘みたいに、衰退してしまった。


あれだけ綺麗にとっていたノートも、今は机の上にすら出ていない。



原因は昼休みのあの出来事。


俺の指によってくるくると回る鍵。
そんな鍵を俺はずっと見ていた。


はぁ…


これで何度目の溜め息だろう?
解らないほどの溜め息が、俺の心の中も埋めていた。



前を向くと蓮の背中が目に入る。
先生の話を聴きながらノートを取る真面目な蓮の姿。



そして横に視線をずらせば、目に入る空羽の姿。
先生の話を聴く余裕なんてなく、ノートをとるのに必死な様子が窺える。



確かにあると想う。
一緒に住んでいないと解らないこと。



俺がいつも風呂の中で歯磨きをしていることとか、朝起きた時は機嫌が悪いこととか…、きっといいだすとキリがないくらいあると想う。



でも、それは多分俺の素の部分なんだ。
蓮には見せたくない、かっこ悪い部分…。



そんな姿をどうしても蓮に見せないと駄目なの?
俺的には、見せたくない。


だって、恋人の前では誰だってかっこ良くいたいだろ?
俺だって一緒だ。



時雨のようにはいかないかもしれないけど、それでも最低限かっこ良い自分を見て欲しい。