キミ色

「ほら、早く行ってあげな!」


おばちゃんに後押しされて、俺は残った方のトレーを手に取り、時雨の前の席に座った。
前では、暑そうにうどんを口に運ぶ時雨の姿が見える。



額に少しだけある汗が、時雨を装飾して余計にかっこよさを増していた。



ほらな、またお前はズルい。
ご飯を食べてる時までかっこいいんだぜ?


俺はサンドイッチを1つ掴むと、無造作に口に運んだ。
口の中に広がるチーズの味。


そして、レモンティーを流し込む。



この瞬間が好きなんだ。
サンドイッチとレモンティーが絶妙に混ざり合うこの味が。



こんなちょっとしたことも、俺の些細な幸せだ。



「あ、そうだ!」


レモンティーの蓋を閉めていると、急に時雨が声を上げた。
箸を器の上に置くと、なにやらポケットを探り出す。



「…ん?」


「あのさ、これ…」



時雨はそう言いながら掌を広げた。
掌にぽつりと置かれた光る金属。



それは、今俺のポケットの中にも眠っているモノだった。



こんなモノを今取り出して何をする気だ?