キミ色

「太陽!!」


考える間もなく、お前はそう言った。
聴いた瞬間に、お前は太陽みたいな笑顔で口を動かしたんだ。



…太陽。



俺も時雨もその答えを聞いて、ブランコを漕ぐのを止めてしまった。
きっと時雨も意外な答えにびっくりしてしまったのだろう。


「…何で?」


深く考えずに、もう俺の口は勝手に動いていた。
そしたら、お前は言ったね。



「だって、太陽はみんなを笑顔にするでしょ?
洗濯物が乾いてママが喜ぶし、雨が降らなくてパパが喜ぶ、あたし達だって公園でいっぱい遊べる!!
皆、笑顔になるでしょ!!」



満面の笑みを浮かべてそう言った花音は輝いて見えた。
でも、そんなキミの言葉を聴いても、ガキだった俺は何とも想わなかった。
むしろ、太陽なんて“かっこよくない”なんて馬鹿なことを想っていたかもしれない。



でも、年を重ねるにつれて、俺は知識を吸収していって、ようやく解った。
どれだけ花音が言った言葉に重みがあったのか…
そして、花音が人一倍周りに敏感だったことにも。



どこまでも、人のタメに尽くす子だった。
自分のことより、人のタメ。



そんな考えが出来るキミが、“かっこいい”と想った。
大人に近づいて、ようやく解ったんだ、、



花音は背がどれだけ低くても、勉強が出来なくても、きっと誰よりも大人だったのだと。
だって、人のタメに動くことは決して簡単なことじゃないから。
強くないと出来ない…、弱い心なんかじゃ、人なんて支えられないのだから…。