キミ色

本当は心の中ですぐに答えは出ていた。
勿論、俺がなりたいのは“鳥”だ。


大好きで、小さい頃からずっとキャンパスに書き続けてきた“鳥”。
俺はずっとずっとこの大空を飛んでいきたいと想ってきたのだから。
この場所から逃げ出したいと想ってきたのだから…



─…でも、この2人には、そんなこと言いたくなかった。


あの頃はまだガキだったけど、ガキの俺なりにこの2人を傷つけてしまうんじゃないかと想ったから…。



だって、鳥になりたい、ということは、この2人から離れるということに繋がってしまう。
せっかく、俺のことを認めてくれて、俺のことを受け止めてくれたこの2人を、そんな風に簡単に手放したくなかった。



だから、何も言えなかった。
この大空を飛び回って、こんな醜い世界から抜け出したい、なんて…。
この2人を置いていくなんて、その時の俺には考えられなかった…。




無意識の内に下に向いてしまっていた顔を上げると、目の前には花音が雑草の中に1本だけ咲いてある花を大事そうに摘み取っていた。



やっぱり花音にそんなこと言えない…。
きっと、言ったら今のあの笑顔を奪ってしまうだろう?



だから、俺は質問を花音に回したんだ。


「花音は何がいいの?」



軽い気持ちでそう聴いた。
なのに、花音は意外な言葉を返してきたんだ。



俺は“うさぎ”とか“りす”とか…、勝手に動物だと決め付けていた。
だから、キミの返事を聞いて、思考が停止してしまったんだ…