だって、この海を渡って行ったら本当に花音に逢えますか…?


答えはNOだ。
この海を渡っていっても、どこかの島に辿り着くだけ。


不可能なんだ─……。



「…っ櫂!」



そう言って満面の笑みで俺の隣に座った蓮は、タオルを取り手や足を綺麗に拭き出した。



「聡クン、大丈夫なの?」


「大丈夫だよ!!もう、夢中みたい!」



満足そうに笑う蓮は、本当にお母さんのようだった。
自分のことのように聡クンを見て喜ぶ姿は、母親そのものだ。



でも、蓮は聡クンだけの母親じゃなかった…
俺にとっても…、母親のような存在だったんだ─……



「聡のね、あの夢中になってる顔が好きなんだ。あの必死になってる顔が好きなんだ。」



言葉にしなくても、なんとなく分かるよ。
蓮の聡クンを見つめるその瞳がそう訴えてる。


「ねぇ、花火。持ってきてるけど、どうする?」


そう言いながら、蓮は花火を取り出した。
ついでにペットボトルの水を取り出しながら。


「やらないの?」



蓮がそんな事を聴くなんて以外だった。
蓮なら、絶対にやるって言うと想っていたからだ。