あぁ、彼女は私じゃないから、扱いも違うんだね。
羨ましいから彼女を自分だと思い込んだけど、やっぱり別だよね。
彼に会ったから帰ろう、そう思いベンチから立ち上がると、彼が座っていたベンチに座っている人がいた。仮面を株っているから性別は分からないけど、その人は大きな箱のようなものを抱えていた。
興味が沸いたので近づいてみると、それは箱ではなくアコーディオンだった。
演奏をするのかと思いしばらく待っていると、その人はアコーディオンに手をかけた。
「妄想は楽しいかい?」
男の人の声だ。優しくチョコレートのような声をしたこの人が何を言っているのか分からなかった。
「此処に座っていた彼が好きなんだろう?」
「妄想じゃないです。彼氏なんです。」
「君みたいなストーカーの嘘くらいすぐ分かるよ」
「ストーカーってなんですか、失礼ですよ」
「さっきの彼のアパートのゴミを漁っている君にそっくりな女の子を見たんだけど、他人の空似?」
言葉に困った。何も言い返せない。
私はストーカー?違う、彼が好きなだけ。
「過剰な愛はやめようよ。報われないんだから」
「過剰じゃないです。いい加減にして下さい」