美喜はわりと早く家を出ることにしている。それは単純に電車が空いていると言う理由からだ。今日もいつもの時間に家を出た。
こんな朝早くにすれ違う子供たち。彼らは地元ではなく私立の学校に通っている子供たちだ。全身紺色の制服が、それを誇らしく語っている。
<子供の頃から大変ね・・・。>
子供たちは美喜の横を駆け抜けていった。駅に向かっていく子供たちを横目で見た。その中にたまたま幸男に似た男の子がいた。友達とじゃれ合い、笑っている。その姿が幸男の後ろ姿と重なった。そして思い出す。自分が今朝見た夢の事を。
<何っ?この感じ・・・どうすればいいの?>
理性ではない。本能だ。それが美喜に命令している。抗えない。
美喜は命令された通り走った。