「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
側にあった公園まで全力で走った。こんなに走ったのは何年ぶりだろう。久しぶりと言う事もあって、なかなか呼吸が整わない。すると、美優が追いついてきた。
「はぁ、はぁ・・・。姉さん・・・待って・・・。」
美優の顔を見るなり、大きく頭を下げた。
「ごめんなさい、ごめんなさい・・・。」
何度も謝った。そんな美喜に、美優は言った。
「こっちこそごめん。きっと姉さんも、すごく大変なんだよね?それなのに無理言ってごめんね・・・。」
「許すも何もないよ。」
「ただ、幸男は幸男なりに苦しんでいるのもわかってあげて。お父さんがいなくなって、そして姉さんもいなくなってしまった。その時のあの子の悲しみは言葉で表せるようなものではなかったの・・・。」
美喜は美優の瞳をみつめる。
「それがあそこまで元気になったんだよ。それはとてもがんばったんだよ。それはわかってあげて・・・。」
「そう・・・。」
「今すぐは無理なのはわかっている。でも、早くあの子の笑顔を、もう一度あの子の本当の笑顔を取り戻してあげたいの。」
美優は涙を流していた。
「ごめんなさい。」
それでも、美喜には謝るしかなかった。
「ごめん・・・取り乱しちゃって・・・姉さんにこんな事言うために追いかけて来たんじゃないのに・・・。」
美優は何かを持っていた。ただ薄暗くて、それが何なのかよくわからなかった。
「じゃ、なんで?」
「これを渡そうと思って・・・。」
美優が持っていたのはアルバムだった。白い表紙にピンクのウサギが描いてある。
「これは・・・?」
そう言いながら中を見た。そこにはたくさんの幸男の写真があった。生まれたばかりの頃からつい最近まで、幸男の色々な笑顔が収まっていた。
「これを見たら、少しは何か・・・思い出すかもしれないでしょ?」
「・・・。」
美喜は躊躇った。
「いいから。持って行って。それで何も思い出すきっかけにならなければ、その時返してくれればいいから。」
「そう・・・。」
アルバムを手に、美喜は家路についた。