鈍い音と共に宮下吉雄は気を失った
「おい、幸弘!」
「なんだよ、文句なら気かねぇからな」
白眼を向いた宮下吉雄を汚いものでも触るようにして、後ろ首を持ち引きずろうとする幸弘は、眉を潜めて俺を見る
俺はそんな幸弘に笑って
「よくやった、ありがとな」
と呟いた
去り際に
「どーいたしまして」
とニコリと笑う幸弘はそのままヤツを引きずり社長室を後にした
これだけやれば十分だろう
もう翼が怯える必要なんかない
宮下吉雄はもう諦めるだろう
そんな俺の考えは浅かった…
条件なんか出さずに警察に突き出していればよかったんだ
異常なほどの執着心を甘くみていたんだ
この時に宮下吉雄を捕まえていれば翼はまた傷つかなくてすんだのかもしれないのに―――……

