社長の溺愛




時刻は23時を軽く過ぎていて、窓から夜空が足を延ばす様子が見える


それがさらに幸弘の不安を煽る

土地勘もなければまともに外出したことだって少ない彼女が都会の、しかも危険な夜にいなくなったのだから


時間帯からして今は慎の忙しいとき

秘書をしているだけあって、邪魔をするようなことだけは出来ない


(とにかく動かねぇと…)


今、自分ができることをしなければと携帯を取り出す


《………幸弘か》


《あぁ、ちょっと聞きたいことがあるんだ》


《なんだ…》


《……翼ちゃん…知らないか》


秋也のことだから心配をするかもしれないとどもってしまう


案の定、秋也は突っかかった


《いないのか?なにも言わずにか?》


《ぁあ…、知らないならいい》


《手立てでもあんのか?》