社長の溺愛




小さい子をあやすようにしていると、胸元から静かに寝息が聞こえてくる


せっかくの二人きりでもマイペースな仔猫ちゃんには関係ないようだ


しばらくすると深い眠りに落ちたんだろう、心臓の動きがゆっくりと温もりを伝えてくる



時刻は4時を少し過ぎたとこ


仕事はまだまだたくさんある



軽い身体を抱き上げて、ソファーまで運ぶ


もう見慣れている光景だが、まだあどけなさの残る寝顔にはいつも胸が騒ぐ


相当重症だな、俺も。


翼専用に置いてあるタオルケットを掛け、ほのかに桃色に染まる頬に口づけをする



翼が起きるまで、仕事再開だな

デスクにまで戻り、次々に飛び込んでくる仕事に意識を集中させる



ほんの少し気を抜いたときだった



キキキッー……ドンッ…!!!

大人たちが騒がしく口走り、何故か呆然と突っ立っている小さい子…俺……?



『きゃぁー!!人が!』


『事故だ!退かれたんじゃないのか!』


『あのトラックの下に女の子がっ!』


『慎!慎!見ちゃだめだ!』


今より若い親父が小さい俺を必死に抱き締める


なんだよ…


なんだよこれは


見たこともない光景がほんの一瞬だけ―――……


まるで走馬灯のように流れた