社長の溺愛




座っている俺に向かって駆け寄ると、俺はその手を軽く引っ張る


必然的に彼女は俺の膝の上に横向きに座ることになる



「………慎…あったかい」


「そうか?」


「うん、ぽかぽかするよ」


チラリと前を見れば、幸弘はどこかに消え去り、いるのは彩加だけだ



まだいたのかよ…


俺につられて翼も彩加をみる



瞬間、翼は勢い良く振り返ると、俺の胸に顔を沈めた



「翼…?どうした?」


いきなりのことにどもりながらも問いかける



「…………」


「翼…?」



ブンブンと首をふってなんでもないことを伝えようとするが、そんなわけないだろ


俺がどれだけ翼を見てきてると思ってるんだよ


だけれど、それだけ見てきたからわかる

無理に聞こうとしたらだめなんだ


顔を隠した彼女を抱き締める


ぽんぽんと頭を撫でてやれば、自然と力が全身から抜けていく

いつの間にか彩加は姿を消していて、部屋にはふたりだけになっていた