社長の溺愛




コンコン……



「矢島です」


「…入れ」



コツコツとヒールを鳴らしながら、相変わらず際どいスーツを着た彩加が社長室に現れる


ファイルに入った資料を俺に見せると、今後のプランについてを話す



「わかりました、では冬物からで」


「あぁ、よろしく頼む」



再びヒールを鳴らし扉に向かう彩加


その指先がドアノブにまだ触れる前に、扉は開いた



「慎~、翼ちゃんのお帰り……」



制服姿の彼女と並んで入ってきた幸弘は、ドア付近にいた彩加を見て顔をしかめる



彩加は幸弘だとわかっていないようで愛想笑いをしている


「あら、翼ちゃんじゃない」

「…………はぃ…」



翼の姿を見つけた彩加は声をかけるが、その返事はなんとも警戒している


もともとふたりには面識はないはずなんだが…


きっと彩加が会社のどこかでその存在を知っていたんだろう


幸弘は翼のことを庇うようにして俺の近くまで連れてくる



彼女は目が会うと「ただいま」と微笑む



「お帰り、こっちにおいで」


「ん…」