社長の溺愛




それは慎が出張に行ってから1週間後のことだった



事情を知っていた南月は毎日、ひとり泣きそうな翼を気にかけていた



休憩時間には優羽がかならず側にいるが、ひとりになった途端に茶色の瞳を揺らす



そんな様子を無理矢理、獲得した翼の隣の席からずっと見つめていた



授業中…。



翼は慎から言われたことをちゃんと守って、文字をノートにまとめる


そのため授業中は安心していたのだが、理科の講師がたまたま風邪だとかで自習になってしまったのだ



あ~あ、また泣きそうな顔してるよ


放っておいたらあと5分で泣くな…



妙にリアルなことを考えた南月は今にも泣きそうな彼女を元気づけるべく、話しかける



「翼、慎さんのこと好き?」



慎の名前を出すだけでものすごい反応を示した彼女は、大げさなんじゃないかってくらいに首をふる




相当好きみたいだな……



心のなかで苦笑しつつも可愛い姿に言葉を続ける