電話が終わった幸弘が後ろから近づいてくる
「慎、先方が来てるってよ」
「わかった」
「翼ちゃんは俺と一緒にいような」
「……うん」
あまり乗り気ではないような彼女の頭を撫でる
「行ってくるから、いい子にな?」
「うん、待ってる」
はぁ……仕事かぁ…
まぁ翼がいるなら頑張れるしな
最後にポンポンと頭に手を置いて、社長室を後にする
――――………
応接室のプレートのかかった部屋に入ると、ぴしっとスーツを着こなした彩加がいた
「慎…じゃなくて…、朝倉社長ね」
そう言った彩加は以前、出張先で会ったような胸元ではなくて
第2までちゃんとしまっている
スカート丈は……少々短いようだが…
「なぜ矢島さんが?」
今は仕事、名前で呼ぶわけにはいかない
「あら、聞いてないかしら?」
「何を?」
彩加は首を捻ると「まぁ、いいわ」と続ける
「あたしが今回の取引、日本に配属されたのよ」
「…………!」

