社長の溺愛




バンッ――………


会社にいるのは警備員のみとなった夜の12時


俺は静まり返ったマンションに帰ってきてた


熱いシャワーを浴び、バスローブのままベッドに倒れこんだ


いつもなら翼の寝顔を見て寝ている時間なのに、今日ばかりは睡魔も顔を出さない



ギシ……――


スプリングが軋み、その音だけが無意味に響き渡る


翼の甘い香りが抱き枕のウサギに染み付いていて、それだけで少し心が満たされる



翼、翼、翼………――



その姿を求めたはずの手は空を仰ぐ


途端、乱暴にドアが開閉する音がした


翼がいるときとは大違いだ



ガチャ―――……



「慎~、用意はできたか?」


覆い被さるようにして真上に顔を出してきたのは幸弘


「見ればわかんだろ」


まだバスローブだっつーの


「そんなピリピリすんなって~」


別にピリピリなんてしてねぇよ…お前がいつも通りすぎんだよ

「…で、そいつは?」


俺は上半身起こし、幸弘の後ろについている強面の男に目線を向けた


その男は幸弘をチラッと見ると俺を凝視した


俺も黙って男の視線を受け止めた