社長の溺愛




《誰を呼べばいい?》


待ってましたと言わんばかりに人物名を上げた幸弘


一言、二言言葉を交わすとまたあとでかけるからと通話を終わらせた



翼―――……



早く抱き締めて安心させてやりたい


もしかしたら泣いているかもしれない

涙を拭ってやりたい


今すぐに君に触れて安全を確かめたい


オレンジに染まりかけた街並みを上から見下ろす俺に見えるものは色のない世界だ


彼女がいないだけでこうも俺は変わってしまう


それだけ強い光で俺の世界は照らされていたんだ



極め細やかな翼の肌に宮下吉雄の汚い手が触れることを想像し、言い表せない怒りが湧いてくる


それを必死に抑え込み、冷静に行動をしていく…




まずは――………



あいつからだな