「どうした、亘」
亘は近くまでくると一枚の紙を俺に見せた
それにはたくさんの字や絵が並べられている
「これが…どうかしたか?」
「よく見てください、それ…凄いんですよ…」
亘の言ってる意味はよくわからないが、黙って紙に目を通してみる
俺は目を見開いた
紙に書いてあったのは落書きやメモではなくサンプル品についてのことだった
絵の横にこと細かい工夫やデザイン説明なんかも書いてある
ただ、それには意見や注文があるわけではなくその服に対しての感想が書いてあるものだった
「たまたま飯塚さんが持ってきた資料のなかに入ってたんですよ」
亘は興奮気味に言う
当たり前だ…悩みまくって絞り出したデザインを越えるものがあっさりと書き出されているんだから
「幸弘の資料に…?」
幸弘が書いたのか…?
それにしては字が綺麗だ、それに幸弘の絵なんか見たことない
「社長、これを書いたひとをぜひデザイン課に!」
………えぇ…
「でもなー、誰かわかんないからなぁ…」
字や絵からすると女のものだと思うが…
「でも、それ凄いですよ!」
「んー…確かに凄いけどなぁ」
誰が書いたのかがわかんねぇーんだよ…

