「あー、そっかぁ。この学校には加奈の目にとまるような出来た男はいないかもしれないなぁ。おまえ程の女にはやっぱ対抗できるくらい完璧な男じゃなきゃいけないよな」


――こんの馬鹿!!


もしかしたら今、あたしは自分の気持ちを彼に正直に言ってしまえてたかもしれない。

なのに、彼はもちろんそんな事知るはずもなく、それをさえぎるようにひょうきんな顔でそう言ったのだ。

そんな鈍感でお調子者の直哉のみぞおちあたりに、あたしは一気に力を入れて肘をグイと押しつけた。

「ぐはっ…!!何すんだよぉ」

目に涙をにじませ、あたしの肘を払いのける直哉は、そのままそこを手でなでる。

「バカバカ、今のが原因で将来おなかの病気になったら加奈のせいだかんな!」

「何言ってんのよ。こんなの昔からやってんじゃん。これくらいで病気になるようなら、もうあんたすでになってるわよ」

「それもそうか」

「……本当バカ」

直哉はおなかをさすっていた手をグーして、もう片方の手の平にポンッと乗せた。

いわゆる納得のポーズとでもいうのだろうか。