「直哉。……あ、あたし達、その……今から恋人同士?になるわけだよ、ね?」

何となく恥ずかしくて、うまく喋れない。

「あ、そっか。両想いだとコイビトになるのか。って事は、加奈は俺の彼女ってわけか」

せっかくあたしがいい気分でいるのに、直哉はと言えば、グーにした手をもう片方の手のひらにポンッと乗せ、オーバーリアクションで納得しているようだった。

――何であたし、こんなの好きになっちゃったんだろ?

こんなの、とは言うまでもなく直哉の事なのだが。

まぁ、そんな事を考えても仕方ない事は百も承知だ。


でも、もし好きになる人を選べるのなら、みんな苦労しないのにね。

あたしは直哉と両想いだったから良かったけど、加村君なんかは、あたしを好きになったばっかりに、嫌な思いをしなきゃいけない。

早く新しい恋を見つけて欲しいと、あたしができるのはそう願う事くらい。