――誰?って何であたしがコソコソ隠れなきゃなんないのよ。

壁から少しだけ顔を出してみると、何やら女の子が直哉の腕を掴みどこかへ連れ出そうとしていた。

――ちょっと、直哉をどこに連れて行く気よ。

別に直哉はあたしのってわけじゃないけれど、こんなふうに知らない女と一緒にいるのは何か嫌。

女の子は、教室から離れた人気のないカウンセリング室前の廊下まで直哉を連れ出すと、周りを気にしながら何か喋っている。

何を話しているのかは声が小さいのと、あたしが少し離れた場所に隠れているのでわからなかった。

けど、多分愛の告白ってやつだろう。
女の子の様子と緊張してるっぽい態度からそう判断した。

でもまぁ、それなら問題ない。
だって直哉は女の子の告白をいつも断っているのだから。

自分から好きになった子じゃなきゃダメだとか。

あたしが彼に告白できないでいる理由は、ここにもある。