ーー「あざしたぁ」


「・・・」




ぷくうっと膨れるほっぺの隣。

消毒を済ませたアキは、さっきのお姫様抱っこに恥ずかしがっている、ように見える。
俺はなんだかその顔を見て笑ってしまった。



「ちょ、笑わないでよ」


「お前はフグか」


「フグじゃないもん!」



ははっと笑いながらからかう俺。


なんか、俺のキャラじゃねぇ。
こいつと居ると頭がおかしくなるのか


ーー帰ろう。


笑った顔を無に直すと、
じゃあな、と言って俺は教室から鞄を持ってアキと別れた。





ーー文化祭前日。

今日はみんなで遊びに行くことになった。

トウマはユキナのキューピッドをしようと
キョウを誘うことにした。




あぁ・・正直、面倒だ。

俺がなんで呼ばれたのかもわからない


ただ、あまりにもトウマが必至に俺に来てほしいと言うから
仕方なく、だ。

遊びに行って疲れるくらいなら
家に帰って早く寝たい


ま、アキがいるならちょっとは楽しめるかもな。


ーーってまた。
なんだんだ俺

アキがいることに嬉しさを覚えて
アキをからかうことが楽しい、なんて

まるで、俺ーー




「いや、違う」


「え、何が違うのキョウたん?」



いつの間にか声に出ていた心の内。

やべ、と軽く苦笑いを浮かべて、少しの紛らわしとしてトウマをいじった。



「つかキョウたんってなんなんだよ毎回」


「え?かわいいじゃん、キョウたーん♪」


「・・黙れ」


「んもー、冷たいんだからキョウたんは!」



あぁ、いじらなきゃよかった

うざい

でも、このやり取りが楽しいなんて


矛盾してるな俺・・
最近は矛盾ばっかりだ

ま、いいかそんなことは





「やっほー!」


「お待たせしましたっ」



ちょうどいいようなタイミングで教室のドアが開いた。

そこに入ってくるアキとユキナとメグ

待ってましたと言わんばかりのわかりやすいトウマの反応。
苦笑いを浮かべ、みんなで教室を後にした。