保健の綾部頼子(あやべよりこ)先生が、コーヒーを飲もうとした格好のまま固まっていた。

だが、俺の姿を見て状況を把握したのか、またかと首を振る。

俺は口の前で人差し指を立てしーっとするとベッドの下に潜り込んだ。

その直後、勢いよくドアが開きあいつが入ってきた。

そっとベッドの隙間から様子を伺う。

「いらっしゃい、可奈。怪我でもしたのか?」

頼子さんが白々しく言う。

「……幸太来たでしょ?お姉ちゃん」

遠目からでもわかるくらい顔が不機嫌だ。

「ああ、幸太君ならそこの窓から飛び出して行ったよ」

「っ!ありがとっ」

そう言うと息つく暇もなく窓から飛び出して行った。

戻ってくるかもしれないので、しばらく息を整えつつ留まる。

どのくらいそうしていただろうか、不意に頼子さんから声をかけられた。