「借り物は〜っと…」

適当に紙のところまで走って。

何枚かある紙の中から
一枚を引く。


…………は???

引いた紙に書いてあった、
“借り物”は。



「森〜」

トボトボ歩いて行くと、

「遥? 何借りるんだ?」

「…………」

無理。

これだけは、ぜってー、

言えねぇ。
言わねぇ。
言いたくねぇ…。


「遥?」

「辞退する」

「…………は?」

「この競争、辞退とかないんだけど…(苦笑)」

と、潤は困ったように笑った。


「もう、知らねぇ…。やだ…」

「は、遥ぁ〜!?」

俺は、あろうことか、
競技を棄権して、
一人フラフラと、
校舎に入ったー…。




不覚にもあたしは、

借り物の紙を落としたことも。

それを、“アイツ”に
拾われてしまったことも。



気づかなかった―…。


自分のことに必死すぎて―…。