「それを言われてしまうと、僕も辛い・・・」
 再び机の上に『ゴン』と額をぶつけ、パトリックは呻いた。

「何が辛いのですか? 傷心しているのは、何もキャサリン・デイ・ルイス嬢だけではありませんよ? よく周りを見回してご覧なさい」
 セドリックの言わんとしていることに、パトリックはぼんやりと考えを巡らせる。

 机の上に並べられたパトリックの為の本日の衣装。
 デスクの上に置かれたティーカップ。
 そして、そのどちらにも手をつけていない自分・・・。

「・・・・・・」

 はっとしてパトリックは飛び起きた。

「メリア・・・!!!」

 もの凄い速さでセドリックの脇を駆け抜け、扉を開け放したままパトリックは部屋を飛び出した。

「パトリック坊ちゃん! メリアさんは調理場ですよ!!」

 セドリックが慌てて彼に向けて叫んだ。
「はあ・・・、ほんと、坊ちゃんには世話が焼けるんですから・・・」
 セドリックは片眼鏡をくいと上げ、小さく微笑んだ。