あの日の夜会以来、パトリックとの間に妙におかしなギグシャクとした雰囲気が流れていた。
 当のメリアは全くと言っていい程気にしてはいなかったのだが、パトリックの方が彼女に対して何か引け目のようなものを感じているようだ。

「リリー・サリーが、今日のティータイムは何が食べたいかと、パトリック様に聞いていましたよ」
 メリアはパトリックになるべく普段通りにと、たわいも無い質問をしたり会話を持ちかけたりと、気を使っていた。

「ああ・・・。君が決めておいてくれていいよ」
 目線も合わせずに、パトリックは忙しなく何やら書類に書き込む手を止め無い。
「分かりました・・・。では、リンゴパイと返事をしておきます」
 メリアは少ししゅんとして部屋を退出した。

 あれからもう一週間も経つというのに、パトリックの様子はずっとこんな感じだ。
 以前のようににこりと笑いかけてもくれないパトリックの態度に、メリアはかなりのダメージを受けていた。

(一体どうしたら前みたいに戻ってくださるのかしら・・・)
 メリアは、リリー・サリーの待つ調理場に向かった。