グラスに入った水を持ってメリアが部屋へ戻った時には、既に彼の姿はどこにも見当たらなかった。
 
 ただ、短くなったろうそくが揺らめき、時折『ジジ・・・』と音を立てるだけ。
 メリアは埃臭い部屋をゆっくりと見渡す。
 さっきまで、確かにあの大怪盗”闇の騎士(ダーク・ナイト)”がここにいた。
 ソファーに触れると、まだ少し温かさが残っている。

「貴方は・・・、貴方は一体何者なの? 大怪盗さん・・・」

 メリアはグラスを握り締めたまま、いまだ高鳴る鼓動を感じていた。