メリアは、生まれて初めて煌びやかなドレスを身に纏っていた。
 赤毛の髪が映えるピンクがかった生地のそれには、パトリックがえらくこだわった細かいガラス玉が散りばめられている。そして、足元はメリアがこれまでに履いたことのないような真っ白な靴。
 おとぎ話に登場するお姫様のように、今のメリアは美しい衣装を身に纏っていた。

「どうしていつも髪を束ねているの?」
 ふと疑問に思ったようで、パトリックは普段と変わらずに左右で編み込まれたメリアの髪を見た。
 いつもと違うのは、結ばれているリボンがドレスと同じピンクだということだけ。

「え・・と・・・」
 困ったように自らの髪に触れ、メリアが苦笑を浮かべる。
 パトリックはメリアのリボンの端をシュルリと引っ張った。

「あっ」
 咄嗟に押さえたが間に合わず、既にメリアの髪からリボンはパトリックの手の中に引き込まれ、パサパサと髪が解けていた。
 慌てて解けた髪を手で確かめるメリアに、パトリックは優しく微笑んだ。

「こうした方がずっといい。メリア、普段も髪を降ろせばいいのに」
 癖っ毛の髪をずっと気にしてきた彼女は、パトリックの思わぬ行動と発言にびっくりしていた。