(なんだ、結局セドリックさんてば、ほとんど最初から話を聞いていたんだ・・・)
 軽やかに去ってゆくセドリックの足取りを見つめながら、メリアはぼんやりそんなことを思った。

 だが、よくよく考えてみるとメリアはとんでもない事態になったと悟る。
「う・・・嘘・・・。ど、どうしましょう・・・!!」
 真っ青になって、あわあわとするメリアに、パトリックがにこりと微笑み言った。
「メリア、君が一緒に来てくれると言ってくれて、とても嬉しいよ」

 メリアはもうそれどころでは無い。
 今はここにいる、完璧な”パトリック・モールディング伯爵”という紳士のパートナーとして、その夜会に出席しなければならないというプレッシャーが彼女をせめ立てている。
「わ、わたし、ダンスが踊れないんです・・・! 一緒に出席したところで、きっとパトリック様に恥をかかせてしまいます・・・!!」
 メリアが泣き出しそうな顔でパトリックを見上げた。

「落ち着いて、メリア。大丈夫、僕がダンスを教えてあげる」