「な、なぜって・・・。”パトリック・モールディング伯爵”程、優しくて真っ直ぐな紳士っていないと思うけれど?」
「そうね、雇い主だからって特別視している訳ではないわよ? 彼を知る人なら皆そう言っているわ」
 こくこくと二人はメリアにそう教えた。

「・・・・・・」
 それっきり、また何か深刻な顔をして黙り込んでしまったメリアを、リリーとサリーは心配そうに覗き込んだ。

「メリアちゃん、平気?」
「どうかしたの? 気分でも悪い?」

 はっと我にかえったメリアは心配させまいと、なんとか笑みを浮かべ「大丈夫です」
と伝えた。

「そうだ、メリアちゃん。お友達になった印に、今度美味しいケーキをご馳走してあげる」
「今度は調理場を訪ねてね」
 妹のようなメリアが気に入ったのか、双子はなでなでとメリアの頭を撫でた。

「はいっ! リリーさん、サリーさん、美味しいティーを持ってきっと行きますね!!」
  


 メリアに新しい友人ができた。
 それも、一遍に二人も!

 
 けれど、二人が去った後、メリアはまた深刻な顔で考え込んでいた。
(まさか、パトリック様が・・・?)
 メリアの中で、今まで自覚していなかった不確かな疑問が大きく膨らみ始めるのだった・・・。