「人は誰しも失敗を犯す。反省は必要だが、いつまでも過去を引き摺るのは愚かなことだ」

 厳しいが、的を得たエドマンドの言葉を、メリアは真摯に受け止めていた。
 今度は、前回のように不思議と全く腹は立たなかった。

「はい・・・」

 ハットを被り、屋敷の外へ出ようとするエドマンドに、メリアは慌てて扉を開く手伝いをする。
「見送りご苦労。屋敷の前に馬車を待たせてあるから、ここでいい」
 エドマンドがメリアにそう告げた。
「では、馬車まで・・・」
「結構。君がいないところで、帰るのに何の支障も無い」
 無愛想なもの言いだが、これはどうやら彼なりの気遣いのようだった。

「そ、そうですか・・・?」
 さっきまでの不機嫌な様子は消えていたので、メリアは彼が怒っている訳では無いと、少し安心していた。

「・・・パトリックが君を雇い入れていたのには驚いた・・・。だが、君は幸運だ。アダム・クラークの屋敷から出て正解だ」

 去り際、エドマンドはそう言い残して出て行ってしまった。

「・・・え・・・?」
 
 このときのメリアはまだ、この先に分かる真実を知らないでいた。