「み、見張り!?」

「はい。先代の旦那様の時代からわたしはこの屋敷で仕えていますが、パトリック坊ちゃん程何をしでかすか分からない方はいません・・・。あの整った容姿で、次々に女性に愛想を振り撒き、何よりファッションへの情熱は並大抵ではありません・・・」
 そう話すセドリックの目には、またもや涙が滲み始めている。

「そ、そうなんですか?」
 メリアは、知らないモールディング伯爵の一面を聞いて、驚きを隠せなかった。

「そうなんです! しかも、どこかれ構わずにすぐにどこかしらの人間をまるで犬か猫かを拾うように連れ帰ってくるんです・・・。正直、このセドリックはもう・・・。ううう・・・っ」
 彼は相当な苦労を重ねてきたのだろう・・・。
「でも、セドリックさんはそんなモールディング様がお好きなんですね」
 メリアの一言で、セドリックがピタリと泣くのを止める。

「メリアさん・・・」

「はい・・・?」

 急に真面目な顔で呼び止められたメリアは、怒られるのではないかと少しばかり緊張する。

「わたしの坊ちゃんへの愛情を理解して下さるのですね!!!」
 パアッと片眼鏡を輝かせ、セドリックはメリアの手を取り握り締めた。
「メリアさん!! 貴女こそ、まさに坊ちゃん専属の侍女に相応しい!! いえ! あ貴女程の適任はいません!!」

 状況が飲み込めず、大きな目を見開き、強く握り締められた手から腰を引き気味にメリアは肩を竦めている。

「そ、そうでしょうか?」

「ええ、ええ!! そうですとも!! このセドリックが言うのです!! 間違いありません!! 期待していますよ!! メリアさん!!」