「それから、今はここにはいないけれど、後は掃除婦が数十人程屋敷で住み込みで働いている。いずれ皆と顔を会わすだろうけれど、皆とてもいい人達ばかりだよ」

 ここで働く人のほとんどが、モールディング伯爵が貧しい暮らしをしていた人や、身寄りの無い者達だとセドリックはメリアに話して聞かせた。
 そんな人達を放っておけないのが、きっとパトリック・モールディング伯爵という人物なのだろう。
 そして、メリアでさえもその優しさに救われ、こうしてここで”専属侍女”とう仕事まで与えて貰えることになったのだ。



  紹介を終えて、メリアがセドリックにさっそく屋敷の中を案内して貰っている最中、堪らなくなってメリアは彼に訊ねた。
「セドリックさん、わたし、専属侍女なんて大きなお仕事を本当にさせて貰って大丈夫なんでしょうか・・・??」
 不安気に見上げてくるメリアに、セドリックはパチクリと目を瞬かせた。

「おや。パトリック坊ちゃんが言っていた通り、心配性なんですね」
 ”心配性”と言われたメリアは、またもや不安気にセドリックを見返す。

「大丈夫ですよ。ここでは、掃除婦がお部屋の掃除も済ませてくれますし、料理はリリー・マリーが。その他の雑用諸々は私がこなしますから、貴女はただ、パトリック坊ちゃんがまた何かしでかさないかを見張っていて下さるだけでいいのです」
 一瞬我が身を疑うようなセドリックのセリフ。